赤・青・黄・緑の4色が均等に並ぶ横縞。
インド洋に浮かぶ島国モーリシャスの国旗は、世界的に見てもかなり珍しい構成を持っています。
実はこの4色、独立当時の激しい政党対立をなだめるために選ばれた色でもあり、さらにこの国は「絶滅した、あの鳥」の生息地としても有名です。
今回はモーリシャス国旗の意外なルーツを掘り下げていきます。
モーリシャス国旗の基本データ

| 正式名称 | モーリシャス共和国 |
| 面積 | 約2,040km²(東京都とほぼ同じ) |
| 人口 | 約130万人 |
| 首都 | ポートルイス |
| 国旗制定年 | 1968年(イギリスからの独立と同時) |
| 通称 | 「4つの帯(レ・キャトル・バンド)」 |
世界でも珍しい「4色均等の横縞」国旗
世界の国旗の多くは2色か3色の組み合わせで作られていますが、モーリシャスの国旗は上から赤・青・黄・緑という4色の横縞が均等に並ぶ、非常に珍しい構成をしています。
ブリタニカ百科事典によれば、このような「4色均等の横縞」だけで構成された国旗は、世界にモーリシャスを含めてもごくわずかしか存在しないとされています。
通称「レ・キャトル・バンド(Les Quatre Bandes=4つの帯)」と呼ばれるこのデザインは、1968年の独立時に制定されて以来、一度も変更されていません。
独立前の”内乱”を鎮めるために選ばれた4色:実は4つの政党の色でもあった
モーリシャスの国旗が制定された1968年前後、この国では独立の是非や国のあり方をめぐって政党間の対立が激化し、1965年と1968年には死傷者を伴う暴動まで起きていました。
そんな緊張状態の中で独立を迎えるにあたり、国を一つにまとめる象徴として考案されたのが、この4色の国旗だったのです。
興味深いのは、この4色が当時の主要政党のイメージカラーとも一致していたという説があること。
赤は労働党、青はモーリシャス社会民主党(PMSD)、黄色は独立フォワード・ブロック、緑はムスリム行動委員会を象徴していたともいわれています。
対立する勢力それぞれの色を一枚の旗に並べて掲げることで、「みんなで一つの国を作ろう」というメッセージを込めたわけです。
色の意味が法律で正式に定められたのは、独立から半世紀以上あとの2022年
実はモーリシャス国旗の色の意味は、長らく「公式な定義」が曖昧なまま、複数の解釈が並存する状態が続いていました。
植民地時代に流された血や独立闘争を表すという説、多民族社会を構成するインド系・アフリカ系・ヨーロッパ系・中国系の人々を象徴するという説など、語られ方は資料によってさまざまです。
この状態に区切りをつけたのが、2022年に制定された「国旗法(National Flag Act)」でした。
この法律によって初めて、「赤は自由と独立のための闘い、青はモーリシャスを取り囲むインド洋、黄色は独立によって島に降り注ぐようになった自由の光、緑は一年を通じて緑豊かな農業国であること」という意味が公式に明文化されたのです。
独立(1968年)から実に54年、色の意味を巡る”解釈の揺れ”にようやく決着がついたことになります。
国旗をデザインした元教師:国からの表彰は、本人の死後にようやく実現した
この国旗をデザインしたのは、当時すでに教職を退いていたグルダット・モハー氏という人物です。
しかし長い間、彼の功績が国から公式に称えられることはありませんでした。
モハー氏は2017年10月、93歳でこの世を去りますが、その約半年後の2018年3月、モーリシャス政府はようやく彼に「星と鍵勲章(Star and Key of the Indian Ocean)」の一つを追贈し、国旗デザイナーとしての功績を正式に認めました。
国を象徴する国旗を生み出しながら、その功労が認められたのが本人の死後だったというのは、なんとも切ないエピソードです。
絶滅した”あの鳥”は国旗ではなく国章に。モーリシャスとドードーの深い関係
モーリシャスといえば、絶滅した鳥「ドードー」の生息地として世界的に知られています。
ドードーはモーリシャス島にしか生息していなかった飛べない鳥で、17世紀にオランダ人が入植した後、乱獲や外来種の影響によりわずか数十年で絶滅してしまいました。
「あっという間に姿を消してしまったもの」の代名詞として、英語で”as dead as a dodo”という慣用句が生まれたほどです。
ただし、このドードーが描かれているのは国旗ではなく、国章(国の紋章)の方です。
国章の盾を支える2体の生き物のうち一方がドードー、もう一方がモーリシャスジカとなっており、下部には「Stella Clavisque Maris Indici(インド洋の星にして鍵)」というラテン語のモットーが刻まれています。
国旗自体は4色の横縞というシンプルなデザインですが、国のもう一つの顔である国章には、この島ならではの自然史がしっかり刻み込まれているのです。
まとめ
モーリシャスの国旗は、4色均等の横縞というシンプルながら珍しいデザインの裏に、独立前夜の政党対立をなだめようとした先人たちの苦労や、色の意味が正式に定まるまで半世紀以上を要したという歴史が隠されていました。
さらに、国旗デザイナーへの表彰が本人の死後だったというエピソードや、絶滅鳥ドードーが国章に息づいているという事実も、モーリシャスという国をより身近に感じさせてくれます。
ほかの国の国旗についても、クイズ形式で楽しく学べるノーマルモードでぜひ試してみてください。