リビアの国旗:34年間、世界でただ一つの「模様のない国旗」だった過去

リビア_国旗

赤・黒・緑の三色に、白い三日月と星。

北アフリカの国リビアの国旗は、独立の歴史と信仰を映し出すデザインです。

しかし実はこの国、かつて34年間にわたって「世界で唯一、模様も紋章も一切ない、ただの緑一色の国旗」を掲げていた時代がありました。

しかもそのデザインが生まれた理由は、なんと「一晩」で決めなければならなかったから。

今回はリビア国旗の波乱に満ちた歴史を掘り下げていきます。

リビア国旗の基本データ

リビアの国旗(赤・黒・緑の三色に三日月と星)
正式名称リビア(国名は暫定的に「リビア国」)
面積約176万km²(日本の約4.7倍)
人口約700万人
首都トリポリ
現行国旗の制定年2011年(元は1951年の独立時のデザイン)
緑一色時代1977年~2011年(34年間)

1951年の独立時に誕生:三色は国の”三つの顔”を表していた

リビアは1951年12月24日、イタリアによる植民地支配を経てイギリス連邦の後見のもと独立を果たしました。

この時に制定されたのが、赤・黒(中央、太め)・緑の三色に、白い三日月と星を組み合わせた国旗です。

デザインを手がけたのは、独立運動にも関わった人物オマル・ファイク・シェニブ氏でした。

色の意味としては「赤は自由のために流された血、黒はイタリア統治下の暗黒時代、緑は農業と将来の繁栄」とされていますが、実はこの三色、当時のリビアを構成していた3つの歴史的地域、トリポリタニア・キレナイカ・フェザーンをそれぞれ象徴する色を組み合わせたものだったともいわれています。

独立にあたって、性格の異なる3つの地域を一つの国としてまとめ上げるための配色だったというわけです。

「明日の朝までに新しい国旗を作れ」一夜漬けで生まれた緑一色

この三色旗は1969年、カダフィ大佐によるクーデターでいったん姿を消し、他のアラブ諸国と連携したデザインの国旗を経て、1977年に世界史上でも類を見ない国旗へと変わります。

それが、模様も紋章も一切ない、ただの緑一色の国旗でした。

そのきっかけは、エジプトのサダト大統領がイスラエルとの和解に動き、親米路線へ転換したことにカダフィ大佐が激怒し、即座にエジプトとの同盟関係を解消したことでした。

怒った勢いのまま、大佐は側近に「翌朝までに新しい国旗を用意せよ」と命じたと伝えられています。

限られた時間の中、側近たちが出した結論はシンプルそのもの。

「無地にするしかない」と判断し、イスラム教で最も神聖な色とされる緑を採用したのです。

突発的な政治判断から生まれたにもかかわらず、カダフィ大佐はこのミニマルなデザインをいたく気に入り、以後34年間にわたって国旗であり続けました。

世界の国旗史上、これに並ぶのはたった一つだけ

「模様も紋章もない単色の国旗」というのは、世界の国旗史の中でも極めて異例です。

実はこの34年間のリビア国旗と並び立つ例は、世界に後にも先にもほぼ一つしかありません。

それが、1996年から2001年にかけてターリバーン政権下のアフガニスタンで使われていた、無地の白一色の国旗です。

どちらも政治的な思想(リビアはイスラムと大佐個人の哲学、アフガニスタンはイスラム法統治の純粋さ)を、あえて何も描かない「究極のシンプルさ」で表現しようとした点が共通しています。

2011年内戦:”独立時代の国旗”が反体制派のシンボルとして復活

2011年、いわゆる「アラブの春」の波を受けてリビアでも大規模な反政府デモが発生し、内戦へと発展します。

このとき、カダフィ政権に反発する勢力が自分たちの象徴として掲げたのが、忘れられかけていた1951年独立当時の赤・黒・緑の三色旗でした。

緑一色の国旗が「独裁体制」の象徴だったのに対し、三色旗は「独立と自由」を思い起こさせる旗として、反体制派の間で一気に広まっていったのです。

同年8月にカダフィ政権が事実上崩壊すると、国民評議会はこの三色旗を正式な国旗として採用。

国連にも承認され、今日まで使われ続けています。

34年間の空白を経て独立当時のデザインが復活するという、国旗の歴史としては非常に珍しいケースといえるでしょう。

三日月と星|地中海沿岸に根付くイスラムの伝統

国旗中央の黒帯に描かれた白い三日月と五芒星は、イスラム教を象徴するモチーフです。

三日月と星の組み合わせはオスマン帝国の旗にも見られるデザインで、かつてオスマン帝国の支配下にあった北アフリカ・中東の国々の国旗に広く受け継がれています。

リビアの三色旗も、こうした地域共通のイスラム的モチーフと、独自の三色の組み合わせを融合させたデザインだといえます。

まとめ

リビアの国旗は、独立時に3つの地域をまとめるために生まれた三色旗が、一夜漬けで誕生した「世界唯一の無地の国旗」に取って代わられ、内戦を経て再び独立当時のデザインへ戻るという、他国にはあまり見られない波乱の歴史をたどってきました。

一枚の国旗の変遷から、その国がくぐり抜けてきた激動の時代を読み取れるのも、国旗を知る面白さの一つです。

国旗の詳しい仕様や歴史的な記録は、Wikipedia「リビアの国旗」の項目でも確認できます。

ほかの国の国旗についても、クイズ形式で楽しく学べるノーマルモードでぜひ試してみてください。

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