黒・緑・金(黄色)の斜め十字。
カリブ海の島国ジャマイカの国旗は、実は世界中の国旗の中でもかなり異色の存在です。
というのも、ジャマイカは「赤・白・青のいずれも使っていない、世界で唯一の主権国国旗」だからです。
さらに、レゲエやラスタファリの”あの配色”とよく混同されがちですが、実際には全く別物。
今回はジャマイカ国旗にまつわる、意外と知られていない雑学を掘り下げていきます。
ジャマイカ国旗の基本データ

| 正式名称 | ジャマイカ |
| 面積 | 約10,991km²(岐阜県とほぼ同じ) |
| 人口 | 約280万人 |
| 首都 | キングストン |
| 国旗制定年 | 1962年(イギリスからの独立と同時) |
| 使用色 | 黒・緑・金(サルタイア=斜め十字) |
世界で唯一、赤・白・青を使わない国旗
世界には約200近くの国旗がありますが、その多くに共通するのが「赤・白・青」のいずれかの色を含んでいるという点です。
フランス国旗、アメリカ国旗、イギリス国旗をはじめ、世界の国旗の実に9割以上がこの3色のどれかを使っているといわれています。
そんな中、ジャマイカの国旗は黒・緑・金(黄色)のみで構成されており、赤も白も青もまったく使われていません。
かつては西アフリカのモーリタニアの国旗(緑地に金の星と三日月、当時は赤帯なし)も同じ特徴を持っていましたが、モーリタニアは2017年に国旗をデザイン変更し、赤帯を追加しました。
その結果、ジャマイカは現在、地球上で唯一「赤・白・青を一切使わない主権国の国旗」という、非常に珍しい称号を持つことになったのです。
幻の「横縞デザイン」|他国の国旗に似すぎて却下された最初の案
ジャマイカ国旗のデザインが今の形に決まるまでには、実は紆余曲折がありました。
1962年の独立に向けて、政府は国民から新しい国旗のデザインを公募し、360点を超える案が寄せられましたが、これといった決め手に欠け、最終的には超党派の議会委員会がデザインを練り直すことになります。
当初検討されていたのは、緑・黒・緑(または黒・緑の組み合わせ)の横縞デザインでした。
ところがこの案、当時アフリカで独立準備を進めていたタンガニーカ(現在のタンザニアの一部)の国旗と配色・構成が酷似していることが判明。
国際的な混同を避けるため、急遽デザインが見直されることになりました。
そこで採用されたのが、現在の「金色の斜め十字(サルタイア)」で画面を4分割するデザインです。
この斜め十字の構図は、スコットランド国旗の「セント・アンドリュー・クロス」にヒントを得たとも言われており、配色こそ違えど、幾何学的な構成はどこか親戚のような関係にあります。
色の意味は独立から34年後に変わった|1996年の”意味のアップデート”
国旗の3色にはそれぞれ意味が込められていますが、実はその意味づけ、独立から34年が経った1996年に大きく見直されています。
1962年の独立当初、政府が発表した公式説明では「金は輝く太陽、黒は苦難(試練)、緑は大地」とされていました。
しかしこの「黒=苦難」という表現は、国民の多くを占めるアフリカ系市民の歴史や誇りを十分に反映していないという指摘もあり、1996年に政府はこの解釈を刷新します。
新しい公式の意味は「黒は国民の強さと創造性、金は国の富と太陽の輝き、緑は豊かな自然と希望」というもの。
同じ配色でありながら、時代とともに込められるメッセージがポジティブな方向へアップデートされたというのは、国旗の雑学としてもかなり興味深いポイントです。
レゲエカラーやラスタファリカラーと混同されがち、でも実は別物
ジャマイカと聞いて「赤・金・緑」のトリコロールを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。
実際、Tシャツやお土産、レゲエ音楽関連のグッズなどでは「赤・金(黄)・緑」の組み合わせがジャマイカのイメージカラーとして定着しています。
しかし、この配色は正式な国旗の色ではなく、ラスタファリ運動(レゲエ音楽とも深く結びついた宗教・思想運動)を象徴する「ラスタカラー」であり、その起源はエチオピア国旗にあります。
ラスタファリ運動にとってエチオピアは精神的に重要な国とされ、その国旗の色(赤・黄・緑)が信仰のシンボルとして広く使われるようになりました。
つまり「赤・金・緑」はジャマイカという国そのものの象徴ではなく、ジャマイカ発祥のラスタファリ運動・レゲエ文化を象徴する色。
一方で正式な国旗は「黒・緑・金」の斜め十字です。
海外はもちろん、日本でもこの2つが混同されているケースは非常に多く、ジャマイカ人にとっては地味に”あるある”な誤解なのだそうです。
「Out of Many, One People」多民族国家ジャマイカの国章とのつながり

ジャマイカには国旗とは別に、独自の国章(国の紋章)があります。
中央の盾にはパイナップルやワニ、先住民タイノ族の男女が描かれ、その下に掲げられているのが国の標語「Out of Many, One People(多くの民から、一つの民へ)」です。
これは、先住民タイノ族、ヨーロッパからの入植者、アフリカから連れてこられた人々、後にインドや中国から渡ってきた移民など、多様なルーツを持つ人々が一つの国民として結びついているというジャマイカの成り立ちを表現したもの。
国旗の色の意味が「国民の強さと創造性」を強調する方向に見直された背景にも、この多民族国家としてのアイデンティティが色濃く反映されていると考えられます。
独立記念日は国旗デー:8月6日はジャマイカ全土がこの色に染まる
ジャマイカでは毎年8月6日の独立記念日に合わせて、街中に国旗が掲げられ、黒・緑・金のグッズや装飾が並びます。
学校や地域のイベントでも国旗にまつわる歴史が語り継がれ、国民にとって独立記念日は単なる祝日ではなく、自分たちのルーツとアイデンティティを再確認する特別な日となっています。
まとめ
ジャマイカの国旗は「世界で唯一、赤・白・青を使わない主権国の国旗」という珍しい特徴を持ちながら、そのデザインの裏には他国の国旗との類似を避けた急な方向転換の歴史や、独立から30年以上を経て見直された色の意味づけなど、意外なドラマが詰まっていました。
レゲエ音楽や観光グッズでおなじみの「赤・金・緑」はラスタファリを象徴する色であり、正式な国旗の色とは別物という点も、覚えておくとちょっとした話のタネになりそうです。
国旗の形や色をどれだけ覚えられたか、ぜひノーマルモードのクイズで力試ししてみよう!