ブラジルの国旗|太陽が昇っていた「朝8時30分」になぜ満天の星が輝いているのか

Flag_of_Brazil

ブラジルの国旗には、緑の大地に黄色の菱形、そして青い天球儀の中に27個の星が散りばめられています。この星空は「1889年11月15日午前8時30分、共和政が樹立された瞬間のリオデジャネイロの空」を正確に再現したものとされます。

ところが、その時刻のリオデジャネイロはすでに日が昇っており、本来なら星は一つも見えないはずでした。なぜ国旗には「あり得ない星空」が描かれているのでしょうか。帝政から共和政への移行劇とともに、その理由を見ていきましょう。

ブラジルってどんな国?国旗の基本データ

正式名称ブラジル連邦共和国
人口約2億1,600万人
首都ブラジリア
現行デザインの基礎1889年11月19日
現在の星配置に確定1992年5月11日
縦横比7:10
通称「アウリヴェルジ(金と緑)」

帝政時代の色を、あえて残した共和国旗

ブラジルの国旗を特徴づける緑と黄色は、もともと帝政時代の皇室を象徴する色でした。緑は初代皇帝ペドロ1世のブラガンサ家、黄色は皇妃マリア・レオポルディナの出身であるハプスブルク家の色です。

1889年11月15日、クーデターによって帝政は倒れ、共和政が樹立されました。国の体制がガラリと変わる大きな転換点でありながら、新政府はあえて帝政時代の色をそのまま引き継ぐ道を選びました。国を分断させず、連続性を印象づけるための判断だったとされます。現在では非公式に、緑は豊かな森林資源、黄色は金をはじめとする鉱物資源を表すとも解釈されています。

最初の案は「アメリカの星条旗に似すぎている」として却下された

共和政樹立直後、最初に国旗デザインを任されたのは法律家のルイ・バルボーザでした。彼が用意した案は、緑と黄色の帯に星を散りばめたもので、どこかアメリカの星条旗を思わせるデザインだったといいます。

これを見た臨時大統領デオドロ・ダ・フォンセカは「他国の旗に似すぎている」として却下し、帝政時代の旗を思わせるデザインへの作り直しを命じました。バルボーザの案が実際に使われたのはわずか数日間に過ぎず、すぐに新しいデザインへと差し替えられることになります。

4人の実証主義者が仕上げた、現在のデザイン

新しいデザインを任されたのは、ハイムンド・テイシェイラ・メンデスを中心とする4人のグループでした。ミゲル・レモス、マヌエル・ペレイラ・ヘイス、デシオ・ヴィラーレスが加わり、帝政時代の国旗にあった紋章を取り除いて、代わりに青い天球儀と標語を描き入れました。

こうして完成した新デザインは、共和政樹立からわずか4日後の1889年11月19日に正式採用されました。この日は現在もブラジルで「国旗の日」として記念されています。

「秩序と進歩」という標語は、フランス人哲学者の言葉から

天球儀を横切る白い帯には、緑色の文字で「Ordem e Progresso(秩序と進歩)」と記されています。この標語は、フランスの哲学者オーギュスト・コントが唱えた実証主義の言葉「愛を原理とし、秩序を基礎とし、進歩を目的とする」を簡略化したものです。

デザインを手がけたテイシェイラ・メンデスたちは、熱心な実証主義の信奉者でした。国旗にまで自分たちの思想を刻み込んだ背景には、新しく生まれる共和国の進むべき道を示したいという強い思いがあったのでしょう。

太陽が昇っていた「あり得ない星空」

国旗中央の青い円は、「共和政が樹立された1889年11月15日午前8時30分、南十字星がリオデジャネイロの子午線上で縦向きになった瞬間の空」を表しているとされます。27個の星はそれぞれ特定の星に対応しており、位置や明るさまで厳密に定義されています。

しかし、研究者によればこの時刻のリオデジャネイロはすでに日が高く昇っており、本来なら星はまったく見えないはずでした。デザイナーたちは実際の観測結果ではなく、あくまで「その瞬間の天球の配置」を想像上で再現したことになります。さらにこの星空は、天球の外側から眺めた視点で描かれているため、実際の星座とは左右が反転した鏡像になっているという凝りようです。

27個の星が出そろうまで、100年以上かかった

1889年の採用当初、星の数は当時の州の数に合わせて21個でした。その後、新しい州が生まれるたびに星が追加されていきます。1960年にグアナバラ州のために1個、1968年にアクレ州のために1個が加えられ、23個になりました。

最大の変更は1992年5月11日、法律第8421号によるものでした。アマパー、ホライマ、ロンドニア、トカンティンスの4州を表す星が一挙に追加され、星の配置も正確な天文学的座標に合わせて修正された結果、現在の27個になりました。州が増えるたびに星を足していくという点では、アメリカの星条旗とよく似た仕組みといえます。

唯一、白い帯からはみ出した星がある

27個の星のうち、パラー州を表す星(スピカ)だけは例外的に、標語の帯の上側にはみ出す形で描かれています。これはパラー州の領域が赤道よりも北側まで広がっていることを示すためだとされます。

また連邦直轄区を表す星はあえて小さく描かれており、首都ブラジリアを中心に他の州がその周りを巡っているかのような構図になっています。星の大きさや位置ひとつひとつに意味を持たせる、非常に緻密な設計がなされている旗といえるでしょう。

まとめ

ブラジルの国旗は、帝政から共和政へと体制が大きく変わる中で、あえて過去の色を引き継ぎながら新しい思想を刻み込むという、両方の要素を兼ね備えたデザインとして誕生しました。中央の星空には、実際には見えるはずのない空を想像で描くという大胆な発想と、州が増えるたびに星を足していく几帳面さが同居しています。

一見すると単なる星の集まりに見える天球儀だが、そこには建国の瞬間への強いこだわりと、100年以上にわたる国の変遷の記録が刻まれています。

国旗の形や色をどれだけ覚えられたか、ぜひノーマルモードのクイズで力試ししてみてください。

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