オランダの国旗は、世界で最も古い三色旗のひとつとされる赤・白・青の横三色旗です。しかしオランダ王室は「オラニエ(オレンジ)家」であり、国の色といえばサッカー日本代表戦でもおなじみのオレンジ色を思い浮かべる人も多いでしょう。
それなのに、国旗そのものにはオレンジ色が一切使われていません。実はこの国旗、もともとはオレンジ色を含むデザインでした。なぜ肝心のオレンジ色が消えてしまったのか、その経緯をたどっていきましょう。
オランダってどんな国?国旗の基本データ
| 正式名称 | オランダ王国 |
| 人口 | 約1,800万人 |
| 首都 | アムステルダム |
| 正式制定 | 1937年2月19日 |
| 縦横比 | 2:3 |
| 通称 | 「オランダの三色旗」 |
独立戦争のシンボルは「オレンジ・白・青」だった
16世紀後半、スペインの支配に対してオラニエ公ウィレム1世を指導者として独立戦争(八十年戦争)が始まりました。このとき反乱軍が掲げたのが、ウィレム1世の紋章の色であるオレンジ・白・青の三色旗「プリンセンフラフ(プリンスの旗)」です。
当初は3色の並び順も厳密には決まっておらず、船ごとにさまざまな配置で使われていたとされます。それでも、独立運動の象徴としてこの3色が広く浸透していったことは間違いありません。
海の上で、オレンジはいつのまにか赤に変わった
17世紀に入ると、プリンセンフラフのオレンジ色が徐々に赤色へと置き換えられていき、「スターテンフラフ(諸州の旗)」と呼ばれる赤・白・青の旗が広まっていきました。
この変化の理由としてよく語られるのが、海上での視認性の問題です。当時の染料で作られたオレンジ色は、強い日差しと潮風にさらされる航海中に色あせやすく、遠くからは白っぽく見えてしまっていたようです。東インド会社の船団など、海運国として世界を股にかけていたオランダにとって、遠目にもはっきり見分けられる濃い赤色の方が実用的だったという見方です。
変更に、特別な政治的理由はなかった
興味深いのは、オレンジから赤への切り替えが、王室や政府による明確な決定を経たものではなかったという点です。色あせや慣習の積み重ねの中で自然と定着していったとされており、長い間、どちらの配色が「正式」なのかが曖昧なまま時代が過ぎていきました。
正式に「赤・白・青」と定められたのは、1937年
この長年のあいまいさに決着をつけたのが、1937年2月19日にウィルヘルミナ女王が発した勅令でした。「オランダ王国の国旗の色は赤・白・青である」と明文化し、鮮やかな朱色・白・紺色という具体的な色味まで規定しました。
オランダ建国から数百年を経て、ようやく国旗の色が法的に確定したことになります。
いまもオレンジ色が掲げられる特別な日
正式な国旗からオレンジ色は姿を消したものの、王室ゆかりの色として完全になくなったわけではありません。国王の誕生日や王室の祝い事など特別な日には、赤・白・青の三色旗の上に、オレンジ色の三角形の旗(ペナント)を掲げる風習が今も残っています。
サッカーの国際試合などでオランダサポーターが身にまとうオレンジ色も、この「国旗には描かれていないけれど、国を象徴する色」という独特の立ち位置を受け継いだものです。
ナチスに利用され、イメージが傷ついた「オレンジの旗」
オレンジ・白・青の旗には、もうひとつ複雑な歴史があります。1930年代から40年代にかけて、オランダの国家社会主義運動(NSB)がこのオレンジ版の旗を好んで使用したのです。
この経緯から、戦後のオランダではオレンジ色の国旗に対して複雑な感情を持つ人も少なくないとされます。王室の色でありながら、ファシズムに利用された過去も背負っているというのは、なんとも皮肉な巡り合わせです。
世界最古の三色旗が、ロシアの国旗にも影響を与えた
オランダの三色旗は、国旗として採用された横三色旗の中で世界最古のものとされることが多いです。この構成はヨーロッパ各国の国旗デザインに大きな影響を与えたといわれています。
中でも知られているのが、ロシアとの関係です。ロシア皇帝ピョートル大帝は17世紀末にオランダを訪問して造船技術を学んだ際、オランダ国旗の配色に着想を得て、白・青・赤の順に並べ替えたデザインを自国の旗に採用したと伝えられています。
まとめ
オランダの国旗は、独立戦争のシンボルとして生まれたオレンジ色が、海上での実用性という地味な理由から静かに赤色へと置き換わっていった末にできあがったものでした。王室の名はオラニエ家でありながら、国旗そのものにはオレンジ色が存在しないというねじれは、正式な制定より先に慣習が定着してしまったオランダらしい歴史の産物といえます。
それでも国王の祝い事やサッカーの応援にはオレンジ色が欠かせないあたり、国旗には描かれなくても人々の心の中では今もオレンジこそがオランダの色であり続けているのでしょう。
国旗の形や色をどれだけ覚えられたか、ぜひノーマルモードのクイズで力試ししてみてください。