中央に民族の盾と2本の槍が描かれた、世界でも珍しいデザインの国旗。それが南部アフリカの国、エスワティニの国旗です。
この国、実は2018年まで「スワジランド」という国名でした。しかも国名変更の理由が「海外に行くたびにスイス(Switzerland)と間違えられるから」だったというから驚きです。
さらに国旗中央の盾には、王族しか身につけることを許されない特別な羽根飾りまで描かれています。今回はエスワティニ国旗にまつわる意外な雑学を掘り下げていきます。
エスワティニ国旗の基本データ
| 正式名称 | エスワティニ王国(旧国名:スワジランド王国) |
| 面積 | 約17,364km²(四国よりやや大きい程度) |
| 人口 | 約120万人 |
| 首都 | ムババーネ(行政)/ロバンバ(王室・立法) |
| 独立 | 1968年9月6日(イギリスから) |
| 国旗制定日 | 1968年10月6日 |
| 政体 | 絶対君主制(アフリカ大陸で唯一) |
国旗の原点は、第二次世界大戦中に生まれた「軍旗」だった
現在のエスワティニ国旗のデザインは、独立時にゼロから作られたものではありません。そのルーツは、なんと第二次世界大戦中の1941年にまでさかのぼります。
当時の国王ソブーザ2世が、連合国側として従軍する「スワジ・パイオニア部隊」に対して贈った部隊旗が、このデザインの原型でした。
それから27年後の1968年、イギリスからの独立にあたって、この軍旗のデザインがほぼそのまま国旗として採用されることになったのです。一枚の国旗に、王室と軍の歴史がそのまま受け継がれている珍しい例だといえます。
民族の盾と2本の槍|白黒の配色に込められた”共存”のメッセージ
国旗中央に横向きに描かれているのは、伝統的な軍事組織「エマブトフォ」が実戦で使用していた、牛の皮でできた本物の戦闘用の盾です。その上下には、2本の槍(アセガイ)が交差するように配置されています。
注目したいのは、盾に描かれた白と黒のまだら模様。この配色は、エスワティニにおいて白人と黒人が平和的に共存していることを象徴しているとされています。武器という力強いモチーフに、融和のメッセージを込めているのが特徴的です。
王族だけに着用が許される、羽根飾り「インジョボ」の秘密
盾の下から伸びる杖のような棒の先端には、房状の羽根飾りが付いています。これは「インジョボ」と呼ばれる装飾で、ウィドウバード(コウヨウチョウの仲間)とロエリー(ムラサキエボシドリ)という2種類の鳥の羽根から作られています。
この羽根飾りは誰でも身につけられるものではなく、伝統的に国王など限られた王族にのみ着用が許される、権威の象徴です。国旗にこうした王室の装飾品がそのまま描かれているのは、世界的に見てもかなり珍しいデザインといえるでしょう。
なお2011年には、実際のロエリーの羽根の色に合わせる形で、国旗に描かれる羽根飾りの色が調整されるという細かな改定も行われています。
色の意味|赤は過去の戦い、青は平和、黄色は資源
国旗全体の3色にもそれぞれ意味が込められています。赤は過去に繰り広げられてきた戦い、青は現在の平和と安定、そして黄色はこの国が持つ豊かな天然資源を表しているとされています。
「エスワティニ」への国名変更|きっかけは”スイスとの取り違え”
この国はもともと「スワジランド」という国名でしたが、2018年4月19日、独立50周年を祝う記念式典の場で、国王ムスワティ3世が突如、国名を「エスワティニ」に改めると発表しました。
国王が理由として挙げたのが、「海外に渡航するたびに、我々はスイス(Switzerland)と関連付けられてしまう」というもの。英語表記の「Swaziland」が「Switzerland」と混同されやすいことへの不満が、国名変更の決め手の一つになったといわれています。
新しい国名「エスワティニ」は現地語で「スワジ人の土地」という意味で、実は植民地化される以前から使われていた呼び名でした。国旗のデザインこそ変わりませんでしたが、こうした背景を知ると、この国旗への見方も少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ
エスワティニの国旗は、第二次世界大戦中の軍旗をルーツに持ち、王族専用の羽根飾りまで描かれた、由緒とディテールに満ちたデザインでした。
「スイスと間違えられるから」という理由で国名を変えてしまうエピソードも含め、小さな国ながら記憶に残る話題の多い国だといえるでしょう。
ほかの国の国旗についても、クイズ形式で楽しく学べるノーマルモードでぜひ試してみてください。